「技術者なのに、なぜ英語が苦手なんだろう」
そう感じた経験はありませんか?
複雑なシステムを理解し、原因を分析し、再現可能な手順で問題を解決できる。
それなのに、英語の発音になると、途端に自信を失ってしまう。
これは、あなたの能力の問題ではありません。
理由はただ一つ。
日本の英語教育は、“音の出し方”を体系的に教えてこなかったからです。
この記事では、技術者の思考に合う“音声学”というツールを使い、
発音を論理的・構造的に習得する方法を解説します。
25年以上、世界各国で英語を使って業務を行ってきた経験から、
「実務で本当に使える」方法だけを厳選しています。
なぜ、技術者は英語の発音に苦手意識を持つのか
技術者の方は、構造理解と再現性に強いはずです。
それなのに、発音になると途端に壁にぶつかる。
❌ どこが間違っているか分からない
❌ 何度練習しても再現できない
❌ ネイティブの真似ができない
❌ 「感覚で覚えて」と言われて挫折
技術内容は完璧なのに、発音で損をしてしまう。
これは、十分すぎるほど多くの技術者が抱える悩みです。
日本の英語教育は「音の仕様書」を渡していない
私たちが学校で学んできたのは:
✓ 文法
✓ 単語
✓ 読解
✓ リスニング
逆に、学ばなかったのは:
❌ 舌の位置
❌ 口の開き方
❌ 息の流し方
❌ 音の作り方という体系
例えるなら、
「演奏方法を習わずに、楽譜ばかり読んでいた」状態です。
更に、技術現場で例えるならば、
【渡されたもの】 プログラムのコード(完成品)
【渡されなかったもの】 開発環境の設定方法 コンパイルの手順 デバッグの方法
こんな感じでしょうか。再現するのは、難しいですよね・・・。
これでは発音で苦労するのは当然です。「仕様書」を渡されていないのですから。
技術者が陥る3つの罠
罠1:理解すれば実行できる、という前提
【実例】Kさん(48歳・機械設計エンジニア)の場合: 「YouTubeで発音解説動画を50本以上見ました。 理論は完璧に理解しました。 でも、いざ話すと全然できない。 理解と実行の間に、こんなに差があるなんて…」
技術の世界では、
理解 → 実行可能
しかし発音は、
理解 → 練習 → 実行
知識だけでは不十分。発音は、 肉体労働(別名:筋トレ)の側面があるのです。
罠2:感覚的な説明への拒絶反応
【実例】Tさん(54歳・IT技術者)の場合: 「英会話教室で『こんな感じで』『もっと柔らかく』と言われても、 全く分からない。 『どこを、どう、どのくらい動かすのか』を教えてほしい。 結局、3ヶ月で辞めました」
「こんな感じで…」 ?
「聞いて慣れて…」 ??
「ネイティブを真似して…」???!
技術者は、
仕様・条件・手順が明確でないものを“再現不能”とみなします。
そして、 「センスがない」 と諦めてしまう。でも、実際は、センスの問題ではなく、仕様書がないだけ。
罠3:完璧主義とのミスマッチ
【実例】Mさん(56歳・化学メーカー研究職)の場合: 「プレゼン資料は完璧に準備しました。 でも、発音に自信がなくて、結局上司に代わってもらった。 技術者として、不完全なものは出せないんです」
技術の世界は、「95%の精度では動かない」。
だから、完璧を追求する訓練を受けています。
しかし発音は、
「完璧じゃないから話せない」という技術者としてのあるべき姿との矛盾に陥ります。
解決策:音声学という“仕様書”
音声学(Phonetics)は、
音の出し方を構造化して説明する学問です。中身はとてもシンプル。
音声学 = 音の出し方の取扱説明書
具体的には:
- 調音点: 口のどこで音を作るか(製造場所)
- 調音法: どのように音を作るか(製造方法)
- 有声/無声: 声帯を使うか否か(電源ON/OFF)
つまり、 音を「設計する」ための図面です。
なぜ技術者に馴染むのか?
音声学が技術者に馴染む理由。
それは、 技術業務と音声学的アプローチが似ているからです。
技術者の思考パターン vs 音声学
| 日常業務 | 音声学的アプローチ |
|---|---|
| 回路図を見る | 調音点図を見る |
| 部品の配置を確認 | 舌の配置を確認 |
| 接続方法を理解 | 発音方法を理解 |
| 日常業務 | 音声学的アプローチ |
|---|---|
| 全体を構成要素に分解 | 単語を音素に分解 |
| 各要素の役割を理解 | 各音の特徴を理解 |
| 相互作用を把握 | 音の連結を把握 |
| 日常業務 | 音声学的アプローチ |
|---|---|
| どこでエラー? | どの音がおかしい? |
| 原因は? | 調音点・調音法は? |
| 修正方法は? | 舌の位置を調整 |
| 日常業務 | 音声学的アプローチ |
|---|---|
| 電圧を調整 | 口の開きを調整 |
| 周波数を変更 | 声の高さを変更 |
| タイミングを制御 | 発音のタイミング調整 |
どれも、とても馴染みのあるプロセスだと思いませんか?
音声学を「技術用語」に翻訳すると、技術者の方の日頃の業務手順に置き換えられることがわかります。
こう考えることで、音声学は、特に理系脳の技術者にとって 全く新しいものではなく、とても身近な方法論だということがわかっていただけるでしょうか。
則ち、すでに持っている技能習得スキルを英語の発音へ横展開すれば良いと言うことです。
実践:thの音を30分で習得する方法
日本人が最も苦手な音、
th(/θ/)。
従来の教え方は曖昧です。
何やら曖昧です。
音声学的アプローチ(手順化)
th(/θ/)の仕様
【①調音点】
上下前歯の先端部
(正確には、舌先と上前歯の接触面)
【②舌の位置(座標)】
- 基準点: 上前歯の裏側
- 移動量: 前方へ1-2mm
- 垂直位置: 上下前歯の間
- 接触圧: ほぼゼロ(触れるか触れないか)
【③調音法】摩擦音(Fricative)
- 気流を隙間から通す
- 乱流を発生させる
【④有声/無声】
無声(声帯振動なし)
手順 & 実装
舌先を上前歯の裏に当てる
→ 基準点の確認
1-2mm前方に移動
→ パラメータ調整
息のみを通す(声なし)
→ テスト実行
「スー」という摩擦音確認
→ 正常動作確認
より具体的になりました。
発音の構造は文字情報だけではイメージしづらい部分もありますが、まずは原理を理解することが重要です。
位置・息・音の関係が分かれば、練習の方向性が明確になり、改善のスピードが上がります。
今後、音声デモでさらに理解しやすい形にまとめていく予定ですが、今日はこの“構造の基本”だけ押さえていただければ十分です。
音声学が効く理由
音声学は、発音を「構造」で理解させます。
従来:何をどのように練習すればいいか分からない
音声学:どこをどう動かせばいいかより具体的
技術者が重要視するのは:
- 再現性
- 手順の明確さ
- 原因と結果の整合性
これらすべてを満たすのが、音声学です。
理解だけでは発音は変わりません。
しかし、
今日から使える「音声学の3ツール」(Concept Tools)
① 調音点マップ
音を作る場所の“地図”。
- 両唇(p, b, m)
- 歯茎(t, d, s)
- 硬口蓋(sh, ch)
- 軟口蓋(k, g)
- 歯の先端(th)
位置が分かれば、改善の見通しが立ちます。
② 調音法の分類
音の作り方を理解する。
- 破裂音:一瞬止めて出す(p, t, k)
- 摩擦音:隙間から息(f, s, sh, th)
- 接近音:近づける(r, l, w)
③ グローバル英語の3原則
25年の実務で確信した原則。
- 明瞭さ > 速さ
- 一貫性 > 完璧さ
- 重要な音 > 全ての音
完璧なネイティブ発音は不要。
正しい構造で、正しい方向へ。
発音改善に効く「実践アイテム3選」(Practical Items)
① ICレコーダーで“客観的に聞く”
SONY ICレコーダー ICD-TX650
- 会議にも使える高音質
- 薄型で携帯性が高い
- PC接続も簡単
発音改善の基本は「自分の声を客観視」すること。
業務用としても使える“技術者の汎用ツール”です。
② 音声学の書籍で“理論を知る”
『日本人のための英語音声学レッスン』牧野武彦
- 調音点・調音法の図解
- 苦手な音への対処
- 再現できる手順の説明
技術者向けに最も相性の良い音声学の入門書です。
③ Audibleで“正しい音を浴びる”
通勤時間を学習時間へ。
- ビジネス書の英語音声
- リズム・イントネーションの自然習得
- メモ→録音→真似のサイクル構築
Audible|技術者のための“聴く学び”
世界の名スピーチから技術英語・ビジネス英語まで幅広く聴けるサービスです。
忙しい日でも、通勤や移動中に“聞くだけ”で学べます。
- TED Talks(音声版)
- 技術英語プレゼン教材
- 発音・イントネーション解説
- ビジネス英語の実践例
※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます
補助:AirPods Pro
- 音の細部が聞こえる
- ノイズキャンセルで集中
- 録音音声の確認がクリア
“耳を鍛えるための設備投資”として優秀です。
今日から始める3ステップ
以下は、発音改善を最短距離で進めるための基本ステップです。
無理のないペースで、取り入れられるものから始めてください。
Step 1(今日)
□ ICレコーダーで自分の発音を録音
Step 2(今週)
□ 音声学の書籍で「位置」と「息」の概念を学ぶ
Step 3(継続)
□ Audibleで毎日リスニング
□ 週1回の録音比較で改善を可視化
まとめ
技術者が発音でつまずく理由:
→ 日本の英語教育が「音」を教えていない
→ 感覚的説明が合わない
→ 完璧主義で動きが止まる
解決策:
→ 音声学という道具で発音を構造化
→ 再現可能な手順に落とし込む
→ 適切なアイテムで習慣化する
必要なのは、正しい方向に向けた努力です。
多忙な技術者ほど、「どこに力を注ぐか」で成果が決まります。スピーチの構造と要点を押さえれば、その努力は無駄にならず、限られた時間が確実に成果へ変わります。
次回予告
「技術者が間違えやすい英語発音ベスト10」
調音点・調音法を使い、
技術英語でよく出る単語を分析していきます。
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