「英語で雑談してください。」
この一言ほど、50代技術者の心をざわつかせる指示はないかもしれません。
技術の話ならいくらでも語れるのに、「週末どうでした?」と聞かれた瞬間にフリーズする。
そんな方に、今回は富岡製糸場をまるごと「英語雑談ネタ」にしてしまうエピソードをお届けします。
富岡ネタを英語で1分話せるだけで、会議前の沈黙が少しラクになります。
英語が得意でなくても、歴史の一場面を自分の言葉で話せると、「英語のテスト」ではなく「自分の経験」を話している感覚に変わっていきます。
富岡製糸場が「ネタとして優秀」な理由

富岡製糸場は、ただの世界遺産ではありません。
- フランスの製糸技術と、日本のものづくりが出会った場所
- 赤ワイン誤解事件に象徴される、「新しいものへの恐怖」が渦巻いた場所
- そこで学んだ工女たちが、日本各地に技術を運んでいった場所
つまり、
「技術」+「歴史」+「人間ドラマ」
が一つに詰まった、技術者向けの“おいしい題材”です。
英語が苦手でも、話したい中身はすでに頭の中にあります。
だからこそ、「英語のやり直し」の入口として、とても相性が良いのです。
この富岡製糸場の歴史的背景については、以前の記事『富岡製糸場から学ぶ 技術者のグローバルコミュニケーション』でも詳しく解説しています。」
まずは日本語で楽しむ:富岡の3つのツボ

英語にする前に、「どこが面白かったか」を日本語で振り返ってみます。
ここは完全に“読み物モード”で大丈夫です。
1つ目は、やはり赤ワイン誤解事件。
フランス人技師たちが夕食のときに飲んでいた赤ワインを見て、

「あれは、工場で働く娘たちの血だ」
と信じてしまった人たちがいました。
当然、事実ではありません。
けれど、「よく分からないもの」「外から来たもの」への不安は、それくらい人を動けなくします。
新工場の募集がうまくいかなかった背景には、そんな“見えない恐怖”があったと言われています。
2つ目は、和洋ハイブリッド構造の工場。
木造軸組の日本建築に、レンガ造りの西洋技術を組み合わせた工場。
輸入した図面どおりではなく、日本の材料や大工の技術に合わせて、細かく調整しながら建てられたと言われています。



「本社仕様」と「現場の事情」を、うまく折り合わせていく仕事。
この感覚に覚えがある方も多いかもしれません。
3つ目は、技術を運んだのは結局“人”だったこと。
富岡で数年働いた工女たちは、その後それぞれの故郷に戻り、新しい製糸工場の立ち上げに関わったり、地元の女性たちに技術を教えたりしました。



マニュアルだけではなく、「失敗と工夫ごと」各地に運んでいったのです。
今の言葉でいえば、彼女たちは「technical evangelist(技術伝道師)」だったのかもしれません。
技術そのものだけではなく、それを人に伝える役割を担う存在です。
ここまで読めば、もう立派な歴史エッセイです。
英語のことは一度忘れて、「ああ、そんな場所だったな」と景色だけ思い浮かべてみてください。
英語にするときのルール:「全部話さない」


ここからようやく英語の話になりますが、ルールは一つだけです。
全部英語で説明しようとしない。
- 導入の一言
- オチの一言
- 教訓の一言
この3つが言えれば、それだけで十分“英語雑談”になります。
英語は、ストーリーの要所だけを英語に置き換えていくイメージです。
細かい説明は、日本語の記憶がちゃんと支えてくれます。
シーン①:会議前の「週末どうでした?」を富岡で返す
オンライン会議の数分前。
海外の同僚から、よくこう聞かれます。



How was your weekend?
ここで固まるくらいなら、全部富岡のせいにする作戦があります。
日本語イメージ
「週末、富岡製糸場に行ってきました。
世界遺産になっている古い製糸工場で、けっこうおもしろかったです。」
シンプル英語版



I visited the Tomioka Silk Mill last weekend.
It is an old silk factory and a World Heritage Site.
これでほぼ必ず、相手からこう返ってきます。



“Oh, really? What is it like?”
ここまで来たら、すでに会議前の沈黙は突破できています。
富岡ネタを英語で1分話せるだけで、会議前の空気は少し軽くなります。


シーン②:赤ワイン誤解事件で一緒に笑う
「What is it like?」と聞かれたあとの続きです。
ここですべてを説明する必要はありません。
赤ワイン誤解事件だけを、短く3文で話してみます。
日本語イメージ
「昔、フランス人技師がいて、夕食のときに赤ワインを飲んでいたんです。
それを見た地元の人たちが、“娘の血を飲んでいる”って本気で信じてしまって。
そのせいで、工場で働くのを怖がる人が多かったそうです。」
シンプル英語版



Long ago, French engineers worked there.
Local people saw them drinking red wine.
Some people thought it was blood!
最後の一文を、少し笑いながら肩をすくめるような仕草で言ってみてください。
流暢さには欠けていても、富岡の話で一緒に笑えた瞬間から、英語での会話はぐっと怖くなくなります。
「通じた」「一緒に笑えた」という感覚は、文法書では得にくい手応えです。
シーン③:技術者あるあるに落とし込む
赤ワインの話で一度笑いが取れたら、そこから今の仕事の話につなげることもできます。
日本語イメージ
「よく分からないものって、まず“怖い”ですよね。
クラウド導入って聞いただけで、“データ全部盗まれるんじゃないか”って言う人がいたり。」
この感覚を、英語で一言だけ添えてみます。
シンプル英語版



People are afraid of new things.
I think it is the same in our projects.
our projects の部分は、our company / our factory / our team などに置き換えてかまいません。
歴史の笑い話から、自分たちの現場の話へ。
これができれば、雑談はもう“ただの英語練習”ではなく、「技術者同士の情報交換」に変わっていきます。


「自分のネタ」を1つ持つということ


ここまでの話を、あえて一つにまとめるとしたら、こんなイメージです。
- 富岡のような、自分にとって思い入れのある場所
- そこにある、ちょっとしたエピソード(赤ワイン誤解事件のような)
- それを英語で数文だけ話せる“自分ネタ”として持っておく
こうした“自分のネタ”を1つ持っておくと、懇親会やオンライン会議の雑談時間が、少しだけ楽しみになります。
毎回新しい話題をひねり出す必要はありません。
同じネタを、相手を変えて何度も話してかまわないのです。
今日の一歩:全部覚えなくて大丈夫です
最後に、この記事の使い方を一つだけ。
この富岡の記事は、“一度で覚える”必要はありません。
何度か読み返しながら、「今日はこの一文だけ英語で言ってみる」というペースで、ゆっくり自分のものにしていただければ十分です。
- Have you heard of the Tomioka Silk Mill?
- Some people thought it was blood!
- People are afraid of new things.
この三つのうち、どれか一つが口から出てくれば、その日はもう「合格」です。
歴史の一場面を英語で話せると、「英語のテスト」ではなく「自分の経験」を話している感覚に変わっていきます。
その感覚を少しずつ増やしていくことが、50代からの英語にとって、一番大きな“投資効果”になるはずです。
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