あれは、私がまだ30代前半の頃。
ドイツの工場で、新しい品質管理システムのプレゼンをする機会がありました。
英語の発音には自信がなかったので、前日まで「R」と「L」の違いを必死に練習しました。
「Right」と「Light」、「Read」と「Lead」――。
舌の位置と発音の違いを何度も確認して、通し練習を何度も繰り返し、録音してそれをまた再度確認し、完璧に近づけたつもりでした。
当日、自信を持ってプレゼンを始めました。
RとLは完璧。
でも、ドイツ人のエンジニアリーダーは、何度も首を傾げました。

Sorry, could you repeat that?
(もう一度言ってくれますか?)
何度も、何度も。
RとLは完璧なはずなのに、なぜ伝わらないんだろう?
プレゼン後、そのリーダーが私に言いました。



Your pronunciation of R and L is good. But I couldn’t understand because of the stress and endings.
(RとLの発音は良いよ。でもアクセントと語尾が聞き取れなかった)
その瞬間、私は25年以上かけて気づいたことの原点を見ました。
RとLより、もっと大切なものがある。
なぜRとLだけでは足りないのか


多くの日本人技術者が、RとLの違いに時間を費やします。
もちろん、RとLの違いは大切です。
でも、プレゼンで本当に伝わるかどうかを左右するのは、別の要素なんです。
多くの現場を経験する中で、発音について一貫して言えることがあります。
技術プレゼンで「伝わる発音」には、3つの急所があります。
この3つを押さえるだけで、RとLが完璧でなくても、驚くほど伝わるようになります。
急所1:アクセント位置(最重要)


なぜアクセントが最重要なのか
英語はストレスアクセント言語です。
つまり、「どの音節を強く言うか」で、意味が決まります。
日本語は音の高低で意味が変わる言語(「橋」と「箸」)ですが、英語は強弱なんです。
実例:projectの悲劇
私がドイツで失敗したのは、この単語でした。
- project
私は「プロジェクト」と、日本語風に平坦に発音していました。
でも、英語では:
- 名詞の場合:PRO-ject(第1音節を強く)
- 動詞の場合:pro-JECT(第2音節を強く)
私は「We will project the data…(データを投影します)」と言ったつもりでしたが、
アクセントが間違っていたので、聴衆には何の単語かすら分からなかったのです。
技術英語でよくある間違い
| 単語 | 間違い | 正解 |
|---|---|---|
| data | デ・ー・タ(平坦) | DEI-tə(第1音節を強く) |
| analysis | ア・ナ・リ・シ・ス | ə-NA-lə-sis(第2音節を強く) |
| process | プ・ロ・セ・ス | PRAH-ses(第1音節を強く) |
| result | リ・ザ・ル・ト | ri-ZULT(第2音節を強く) |
アクセントを間違えると何が起きるか
- 聴衆は「知らない単語」だと思う
- 文脈から推測できない
- 何度も聞き返される
- あなたの信頼性が下がる
逆に、アクセントさえ正しければ、RとLが多少曖昧でも通じます。
急所2:語尾の子音(明瞭さの鍵)


インド人同僚からの指摘
ドイツでの失敗から数年後、今度はインド人の同僚に言われました。



Holy, you need to finish your words.
(ホーリー、単語を最後まで言って)
当時の私は、語尾の子音を発音していなかったんです。
日本人が語尾を消してしまう理由
日本語は「母音で終わる言語」です。
- さくら(sa-ku-ra)
- こんにちは(ko-n-ni-chi-wa)
すべて母音(a, i, u, e, o)で終わります。
だから、英語でも無意識に母音で終わろうとしてしまうんです。
実例:testが「テス」になる悲劇
私が「test」と言ったつもりが、「テス」と聞こえていました。
test → 「テス?」 project → 「プロジェ?」 result → 「リザル?」
語尾の t が消えると、聴衆は「え、何?」となります。



・・・???
どう直すか
語尾の子音は、「添える」だけでOKです。
強く「ト!」と言う必要はありません。
- test:「テストゥ」ではなく「テスt」(舌を上あごに軽く当てる)
- project:「プロジェクトゥ」ではなく「プロジェクt」
- result:「リザルトゥ」ではなく「リザルt」
語尾を添えるだけで何が変わるか
中国人の顧客へのプレゼンで、私はこの違いを実感しました。
たったこれだけで、伝わり方が劇的に変わります。
急所3:イントネーション(自信の印象)


フランス人上司の一言
これは、アメリカ本社でのプレゼンでのこと。
私の上司はフランス人でした(ノンネイティブ同士です)。
プレゼン後、彼は私にこう言いました。



Your content is excellent. But you sound… uncertain.
(内容は素晴らしい。でも、自信がなさそうに聞こえる)
日本人の「疑問形イントネーション」
日本人は、文末を上げて話す癖があります。
「これが結果です↗」 「次のステップはこちらです↗」
これが英語になると:
「This is the result↗(これが結果…ですか?)」 「The next step is this↗(次のステップは…これでいい?)」
疑問形に聞こえてしまうんです。
技術プレゼンでのイントネーションの鉄則
肯定文は、文末を下げる。
| 言いたいこと | 間違い(文末↗) | 正解(文末↘) |
|---|---|---|
| これが結果です | This is the result↗ | This is the result↘ |
| 次のステップです | The next step is↗ | The next step is↘ |
| 改善しました | We improved it↗ | We improved it↘ |
実例:ドイツ人への最終プレゼン
あのドイツ工場での失敗から5年後、私は再び同じ場所でプレゼンをする機会がありました。
今度は、アクセント、語尾、イントネーションすべてを意識しました。
This is the PRO-ject↘ result↘. We completed the test↘ successfully↘.
プレゼン後、あのリーダーが笑顔で言いました。



Much better! You sound confident now.
(ずっと良くなった!今は自信があるように聞こえるよ)
まとめ:RとLより大切な3つの急所


- アクセント位置:どの音節を強く言うか
- 語尾の子音:単語を最後まで言う
- イントネーション:文末を下げて自信を示す
この3つを意識するだけで、あなたのプレゼンは劇的に変わります。
RとLが完璧でなくても、大丈夫。
完璧なネイティブ発音は不要です。
「伝わる発音」は、急所を押さえれば作れます。
実際の発音を確認したい方へ
今回の3つの急所は、実際の「音」と「リズムの動き」を見ることで、さらに理解が深まります。
📺 YouTube Shorts「60秒発音特訓シリーズ」を順次公開中
- 「processのアクセント位置」60秒実演
https://youtube.com/shorts/wlebRVWHue4?feature=share - 「testの語尾処理」60秒実演
https://youtube.com/shorts/nJnAX2YvtC8?feature=share - 「自信を伝えるイントネーション」60秒実演
https://youtube.com/shorts/1O4yMkHL-L8?feature=share
→ [YouTubeチャンネルはこちら]
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