那須・鹿の湯体験記|1380年の歴史が教えてくれたこと

目次

はじめに:年の瀬に訪れた、古の温泉

年末年始の休暇に入られている方も多い頃でしょうか。
ここしばらく、英語プレゼンや発音など「真面目な話」が続いていたので、今日は少しだけ休憩も兼ねて、肩の力を抜いて読める記事を書いてみました。

とはいえ、内容はただの温泉レポートではありません。
1380年続く那須・鹿の湯での体験が、50代技術者の英語プレゼンとも意外なところでつながっていた――そんなお話です。

2025年12月、私は那須の鹿の湯を訪れました。

鹿の湯について

所在地:栃木県那須町
創業:飛鳥時代(約1380年前)
泉質:酸性・含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉
特徴:41度から48度までの温度別の湯船
源泉かけ流しの白濁した硫黄泉

栃木県で最も古い温泉。
木造の古い建物が、今も現役で使われています。

1380年の歴史を、この目で見て、体で感じてみたい。
そんな思いで、那須へ向かいました。

実際に入ってみると、この体験が英語の練習とも意外なところでつながっていることに、あとから気づきました。

冬の那須、湯の花採取場と硫黄の香り

宇都宮から一般道でおよそ2時間弱。
山道を登るにつれて、景色が少しずつ冬の表情に変わっていきます。

12月の那須。ところどころに雪が残り、空気は澄んで冷たい。

鹿の湯に着く少し手前、川沿いに白く濁った湯の花採取場が見えました。
温泉が流れ込む川、その水面から立ち上る湯気。

観光ポスターのような派手さはないものの、白い湯気と冬の空気がつくる静かな美しさに見入って、思わず車を停めてしばらく眺めてしまいます。
観光地らしい演出はほとんどないのに、長く続いてきた場所だけが持つ静かな存在感がありました。

そこから少し進むと、木造の古い建物が現れます。
そして、駐車場から近づくにつれて、独特の硫黄臭がはっきりしてきます。

この香りが、「今から温泉に入るんだ」という実感を運んできてくれます。

入浴の心得:壁に掲げられた看板

受付を済ませ、脱衣所に入ると、壁に一枚の木製看板が掲げられていました。

「霊泉 鹿の湯 効果ある入浴の心得」

そこには、こう書かれています。

  • 一日の入浴回数:最高四回
  • 一回の入浴で何度も出入りしたり、ひしゃくでお湯をかけ続けるのは逆効果。
  • 入浴後は体を冷まさないこと。

さらに、かぶり湯の仕方も細かく書かれています。

  • 【入浴前】かぶり湯
    • 大人:ひしゃくで約200回
    • 子ども:約100回
      ひざを湯ぶちに近づけ、頭を下げて、お湯を静かにかぶる。

そして、目を引いた一文がありました。

「声を出さねば」

熱い湯に入るとき、声を出した方がよい――そう書いてあります。
この一言を読んだとき、英語プレゼンの前に「声が出ない」と悩む50代技術者の姿が、ふと頭に浮かびました。

なぜ「声を出さねば」なのか・・・。
ぼんやりと考えながら、とにかく低い温度から順番に入ってみることにしました。

温度別の湯船を巡る体験

かぶり湯から始める

まずは、かぶり湯。
専用の湯船の横で、ひしゃくを使って頭にお湯をかぶります。

カウントを取りながら、黙々と頭にかけていきます。

「これは、ちょっとした修行だな……」

そう思いながら周りを見ると、地元の常連さんたちも同じように淡々と続けています。
このかぶり湯が、湯あたりやのぼせを防いでくれるそうです。

プレゼン前のウォーミングアップと同じで、いきなり本番には入らない
まずは準備から、というわけです。

41度:最初の一歩

かぶり湯を終えて、最初に入るのは41度。

白濁の深めの湯にゆっくりと体を沈めると、思わず小さな息がもれました。

「ふう〜……」

硫黄臭が鼻腔を満たし、白く濁った湯の中で自分の体の輪郭が曖昧になっていきます。

肌にまとわりつくような柔らかさ。
普通の温泉とは明らかに違う、濃密な質感。

湯が体の隅々まで染み込んでいくような感覚。
肩の力が抜け、呼吸がゆっくりと深くなる。

なんとも言えない気持ちよさ。

数分ほど浸かり、湯から上がって木のベンチで休憩。
窓から入ってくる涼しい風が、火照った体を静かに冷ましてくれます。
決して冷たすぎず、そよそよと心地よく撫でるように体を纏い、通り抜けてゆく爽やかで軽やかな優しい風。

この心の底からホッとする「極上の休憩時間」が、次の湯船への準備になっている。
ゆったりくつろぎながら、じんわりとワクワク感も盛り上がる、そんな感覚がありました。

42度・43度(42.5度)・44度:段階的に上げていく

次に42度の湯へ。
先ほどよりはっきりと熱さを感じますが、41度で体が温まっているので、驚くほどではありません。

ここでも、湯に浸かった瞬間に、あまりの心地よさに自然と声が出ます。

「ふう〜……」

同じことを、42.5度(男湯は43度)、44度でも繰り返します。

  • 湯船に入る
  • 最初の10秒ほどは体がびっくりして呼吸が浅く、速くなる
  • そのあと、呼吸がゆったりと深くなり、筋肉の緊張が抜けていく

この「慣れるまでの短い時間」を、何度も体験するのがなんとも愉しく心地よく感じました。

技術的なトレーニングでいうと、
「少しだけ負荷を上げて、慣れて来たらまた一段」という感覚に近いかもしれません。

46度:自分なりの限界値

女性浴場で一番高いのは46度。(かぶり湯は48度です。)
湯船の前で、一瞬だけ足が止まりました。

「これはさすがに熱そうだ……」

それでも、ここまで段階を踏んできたおかげか、
「まぁ、30秒だけ」と思い切って足を入れます。

「ふう〜〜〜……」

今度は、さっきより大きめの息。
意識して深く吐かないと、流石に体が固まりそうになる熱さです。

しばらくすると、呼吸がまた落ち着き、徐々に体の力が抜けていきます。
30秒〜40秒で湯から上がり、またベンチへ。

周りを見ると、他の人たちも同じように、
小さな声を漏らしながら湯に浸かり、そして静かに休憩していました。

「声を出さねば」――確かにその通りだな、と実感しました。

湯から上がって気づいたこと

何度か湯船と休憩を繰り返し、十分に温まってから浴場を出ました。

湯船に浸かる気持ちよさとはまた別の、静かで深い癒しが訪れます。
体も気持ちも芯から温まり、解きほぐされていく。

極上の、緩やかな時間。

体は軽く、芯からぽかぽかと暖かい。
もちろん、肌はすべすべです。

休憩所でお茶を飲みながら、ぼんやりとさっきの感覚を振り返っていました。

「声を出す、って大事なんだな」
ふと考えたのは、

  • 熱い湯に入るとき、自然に「ふう〜」と声が出る
  • 声を出すことで、息が深く吐けて、体の緊張が抜けていく
  • 段階的に温度を上げていったから、46度でも無理なく入れた

「これ、英語プレゼンの練習とも同じだな」 と。

ここから先は、鹿の湯での体験から生まれた、
「50代技術者の英語プレゼンに通じる3つの学び」をまとめてみます。

技術者に効く3つの学び

1. 声を出すことで、体がほぐれる

鹿の湯の看板には、「声を出さねば」と書かれていました。
熱さに体がびっくりしたとき、息を吐きながら声を出すことで、筋肉の緊張が抜けるからです。

英語プレゼンでも同じです。

  • いきなり本番で声を張ろうとしても、喉も体も準備ができていない
  • まずは「あ〜」「う〜」でもいいので、実際に声を出してみる
  • 声を出すことで、呼吸が整い、体がスイッチを入れてくれる

「声を出す = 息を吐く = 体が緩む」
この連鎖ができると、緊張しやすい50代でも、少しずつ楽に話せるようになります。

2. 段階的に負荷を上げる

41度から46度まで、一段ずつ温度を上げていったからこそ、
最終的に46度の湯にも無理なく入ることができました。

英語も、まったく同じです。

  • いきなり難しい技術プレゼンを英語でやろうとしない
  • まずは30秒の自己紹介
  • 次に、自分の担当業務だけを1分で説明
  • その次に、スライド1枚だけを英語で話してみる

少しだけ負荷を上げて「慣れる」を繰り返す。
このやり方が、50代の学び直しには一番合っています。

3. 「間」を取ることで、回復する

鹿の湯では、湯に浸かる時間と、ベンチで休む時間がセットになっていました。
この「間」があるから、体が回復し、次の湯船にも入れるのです。

英語プレゼンでも、「間」はただの沈黙ではなく、回復の時間です。

  • 文と文の間に、1呼吸おく
  • 重要な数字やキーワードの前後に、ほんの一瞬だけ止まる
  • 相手の表情を確認してから、次のフレーズに進む

聞き手にとっては「理解の時間」、話し手にとっては「落ち着きを取り戻す時間」。
50代の話し方にこそ、このゆったりした「間」がよく似合います。

体を通して学ぶということ

鹿の湯で感じたのは、体を通して学ぶことの確からしさでした。

  1. 「声を出すと楽になる」
  2. 「段階を踏めば、意外と熱さに慣れていく」
  3. 「間を取ると、次の一歩を踏み出しやすくなる」

これらは、頭で読んで理解するだけでは、なかなか腹落ちしません。
実際に湯に浸かり、体がびっくりしつつ、ほぐれていくプロセスを経験して初めて、
「ああ、こういうことか」と腑に落ちるのだと思います。

英語プレゼンも同じです。

本を読んだり、動画で理屈を学んだりすることは大切ですが、
最終的には「声を出して、失敗も含めてやってみる」ことでしか身につきません。

1380年続く温泉から、そんな当たり前のことを、改めて教わりました。

もう一つの気づき:感情が動くと、言葉も動く

鹿の湯で、もう一つ大きな気づきがありました。
湯に入った瞬間の「熱い!」、湯に徐々に慣れていく過程と、湯から出た後の「気持ちいい…」。この2つの瞬間、感情が大きく動きました。

感情が動いた時、言葉は頭ではなく、体から自然に出てきます。
これは、日本語でも英語でも同じです。

日本の職場では、感情をあまり表に出さないことが「大人の振る舞い」とされがちです。
一方、英語圏では、驚きや喜びを、その場で言葉に乗せて表現する場面が多くあります。

50代の技術者の方が英語で苦労しやすい理由の一つは、長年「感情よりロジック」を優先して話してきた経験かもしれません。
技術的な説明は得意でも、「驚き」「悔しさ」「うれしさ」を言葉に乗せて伝える練習は、あまりしてこなかったはずです。

鹿の湯は、「感情が動くと、言葉も体から出てくる」という、言語の原点を思い出させてくれました。
この感覚は、英語で話すときにも、そのまま活かすことができます。

鹿の湯の3原則:家でできる英語トレーニング

鹿の湯で体験したことは、そのまま「家でできる英語トレーニング」に変えられます。
ここでは、忙しい50代でも試しやすい「3つの原則」にまとめました。

原則1:声を出す

鹿の湯で熱い湯に入った瞬間、「ふう〜」と自然に声が出ました。
この「声を出す」ことで、呼吸が深くなり、体もゆるみます。

自宅でできる練習:

  • 朝シャワーを浴びながら、「あ〜〜」と声を伸ばしてみる。
  • プレゼン前に、「This system is FAST!」と、いつもより少し大きめの声で言ってみる。​
  • 冬の朝、窓を開けて深呼吸しながら、英語で一言つぶやいてみる(Good morning. It’s cold today. など)。

こうして日常で「声を前に出す」習慣を作っておくと、本番のプレゼンでも声が出やすくなります。​

原則2:温度差(Stress & Intonation)

鹿の湯では、41度 → 43度 → 46度と、少しずつ温度を上げていきます。
この「差」があるからこそ、体は変化をはっきり感じます。

英語も同じで、「強く言うところ」と「力を抜くところ」の差がないと、相手の耳に残りません。​

自宅でできる練習:

  • 鏡の前で、「FAST」と「slow」を対比させて発音してみる(FAST を強く、slow をやわらかく)。​
  • 手を軽く叩きながら、「TA-ta TA-ta」のようにリズムをつけて単語やフレーズを読む。​
  • 「This system is FAST. Very FAST.」と、「FAST」を強く、それ以外は少し弱くして繰り返す。​

原則3:間(Pausing)

鹿の湯では、湯船に入る → 出る → 休憩 → また入る、のサイクルを何度か繰り返します。
この「休憩の間」があるからこそ、体が回復し、次の一歩が楽になります。

英語プレゼンでも、文と文の間や、重要な単語の前後に「1秒の間」を入れるだけで、伝わり方が大きく変わります。​

自宅でできる練習:

  • 1文話したら、心の中で「1…」と数えてから、次の文を話す練習をする。​
  • スマホで録音し、自分の話すスピードと「間」があるかを聞き直す。​
  • 「This system is fast. [間] Very fast. [間] Let me show you.」と、意識的に間を入れて読んでみる。​

この3つの原則を、毎日の生活の中で少しずつ試してみるだけで、「英語を頭で考える」から「体で話す」感覚に近づいていきます。

鹿の湯、また是非行きたい

鹿の湯は、宇都宮から一般道で約2時間弱。
冬の那須、雪と硫黄の香り。
1380年の歴史が、今も静かに息づいている場所です。

もしまだ行ったことがなければ、ぜひ一度訪れてみてください。
湯船に浸かって「ふう〜」と声を出した瞬間、
あなた自身の仕事や英語のこと、または人生のことを、違う角度から見直せるかもしれません。

次のステップ:あなたの英語を、一緒に設計しませんか?

鹿の湯で感じたように、50代からでも、段階を踏めば体も声もまだまだ変わります。
同じように、英語プレゼンも「急がず、焦らず、一歩ずつ」設計し直していけば、
技術者としての経験をそのまま強みに変えていくことができます。

「自分の英語、本当にこれで伝わるかな…」
そんな不安を感じるときは、
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