70点の英語で世界と戦う技術者たち

海外との技術会議。
あなたの設計したシステムが、グローバルプロジェクトの中核に採用された。
画面の向こうでは、アメリカ・ドイツ・インド・シンガポールのメンバーが、英語で議論している。

完璧な英語ではない。
ところどころ文法は崩れるし、単語が出てこない瞬間もある。

それでも、プロジェクトは前に進む。
あなたの提案に「Good point.」「Let’s do that.」と賛同が集まる。

世界には、
「ネイティブ並み」ではなく「70点の英語」で結果を出している技術者が、たくさんいます。​
彼らに共通しているのは、流暢さではなく、
明瞭さ」と「シンプルさ」と「一貫性です。​

この記事では、
70点の英語で世界と戦う技術者たちのスタイルと、
今日から真似できる「70点英語トレーニング」のコツを紹介します。

目次

なぜ「70点の英語」でいいのか

世界のエンジニアリング現場では、英語ネイティブよりもノンネイティブ話者の方が人数的には多く、互いに第二言語として英語を使う場面が一般的になっています。​

そのため、現場で本当に求められているのは「完璧な文法」よりも、「誰にでも分かる英語で技術を説明できること」です。​“Perfect English” ではなく “Effective English(伝わる英語)”。

長く複雑な英語より、短くシンプルな英語の方が誤解が圧倒的に少ないです。国籍もバックグラウンドも異なるメンバーが集まるからこそ、「伝わる構造」が何より重要になります。
「100点を狙って黙るより、70点の英語で確実に発言する」方が、プロジェクトを前に進める力になります。

ここでいう「70点の英語」とは、テストで満点を取る英語ではありません。
相手が問題なく理解できて、議論が止まらずに進むレベルの英語を指しています。
文法ミスや言いよどみがあってもかまいません。「言いたいことが誤解なく伝わるかどうか」が合格ラインです。

70点英語で戦う技術者の共通点

共通点1:技術説明を“削っている”

70点で戦っている技術者ほど、技術説明を「削る」ことに意識的です。

  • 専門用語は必要最小限にする
  • 1文を短くする
  • 「3つだけ」など数で区切る

といった工夫で、理解される確率を上げることを重視しています。​

たとえば、こんな違いです。

  • NG:
    • We implemented a highly sophisticated multi-layered architecture that enables…(長くて抽象的。誤解が生まれやすい)
  • OK:
    • Our system has three layers. First, the API layer. Second, the logic layer. Third, the database layer.(短く分割・番号付き)​

どちらも技術的には間違っていませんが、
世界中のメンバーに伝わりやすいのは後者です。

その他にも、スライドの文章をそのまま読み上げてしまうのは、「削れていない」典型的なNGパターンです。

共通点2:話すスピードより「明瞭さ」を優先

国際的な技術現場を見てきて感じるのは、「速く話すより、はっきり伝える方が圧倒的に通じる」という事実です。

  • ゆっくりめに話す
  • 単語と単語の間に少し間を置く
  • キーワードをはっきり発音する

この3つだけで、「聞き取れない」場面が大きく減ります。​

「流暢さ」を追いかけて早口になると、
相手は「英語が得意そうだ」と誤解し、早口で返してきてしまう、というケケースもあります。​
70点の英語で戦う技術者は、あえてスピードを落とし、「自分のペース」を守っています

日本語と同じスピードで英語を話そうとすると、息が続かず、相手にも聞き取りづらい印象を与えてしまうので要注意です。

共通点3:キラーフレーズを“決め打ち”している

海外の会議を見ていて痛感するのは、“その場で英作文しようとしない技術者ほど話が安定する”ということです。よく使う表現はあらかじめ型にしておく方が圧倒的に楽になります

  • 意見を言うときのフレーズ
  • 反対するときのフレーズ
  • 分からないときのフレーズ

をあらかじめ決め打ちしておくことで、「その場で英作文しないで済む」からです。​

例:

  • My main point is…(主張を始める)​
  • From my point of view…(自分の視点を示す)​
  • Could you say that again, a bit more slowly?(聞き返す)​

70点英語で戦う技術者は、こうした「自分の型フレーズ」を10〜20個持ち、それを回して使っています。

その場で毎回ゼロから英作文しようとするのはNGです。時間もかかり、言いたいことの半分も出てこなくなってしまいます。

グローバル現場で求められる英語とは

国際的なテクニカルライティングや「国際ビジネス英語」のガイドでは、次のような原則が繰り返し強調されています。​

  • シンプルな語彙を使う(難しい単語より簡単な単語)
  • 短い文に分ける(一文一メッセージ)
  • 論理構造をはっきり示す(First, Second, Finally… など)
  • 曖昧さを避ける(maybe, sort of を乱発しない)

これらはすべて、「世界中のノンネイティブにとって読みやすい/聞き取りやすい英語」を目指したルールです。​
つまり、あなたが目指すべきは「ネイティブらしい格好良さ」ではなく、

“International English(国際英語)=グローバル英語 としてのわかりやすさ”です。​

70点英語を支える3つの力

1. 構造化された説明力

ハーバード・ビジネス・スクールなどの資料では、エンジニアに必要なコミュニケーションとして「複雑な技術をシンプルな構造で説明する力」が挙げられています。​

おすすめの型:

  1. 結論:The main problem is… / Our proposal is…
  2. 理由:There are three reasons. First… Second… Third…
  3. 例・影響:For example… This means that…

この3ステップだけでも、「話が分かりやすい技術者」に一気に近づきます。​

2. キーフレーズの使い回し

グローバル環境で働く多くの技術者は、「日常的に使う英語はそれほど多くない」と証言しています。​

  • 会議を始める・締める
  • 意見を言う・賛成する・反対する
  • 分からないときに確認する

といった場面はパターン化されているため、キーフレーズを“使い回す”発想がとても効率的です。​

3. 通じる発音(明瞭性)

発音に関する研究では、「明瞭性(intelligibility)が高ければ、ネイティブらしさは必須ではない」とする見解が広く支持されています。​

英語で苦しくなるのは、“ネイティブのように話さなければいけない”と思い込んでしまうからです。実際に大切なのは、相手が聞き取れる明瞭さ。そこさえ押さえていれば、英語は十分に伝わります。

  • すべての音を完璧にする必要はない
  • 強勢(どこを強く読むか)とリズムを整える方が、通じやすさに直結する

技術英語では、特に専門用語の強勢位置を押さえることが重要とされています。​

今日からできる「70点英語」トレーニング

Step 1:自分の「3つの場面」を決める 目安時間:10〜15分

まずは、次の3つの場面に絞って、英語を「設計」します。

  1. 自己紹介(会議の最初の1分)
  2. 自分の担当範囲の説明(2〜3文)
  3. 意見を一度だけ言う場面(会議中)

それぞれについて、日本語で言いたい内容を箇条書きにし、
そのあとでシンプルな英語に落とし込むのがコツです。​

  • 目安時間:10〜15分。紙のメモ帳でも、スマホのメモアプリでもかまいません。

Step 2:英語を「短く・シンプルに」書き直す 目安時間:15〜20分

書いた英語は、次の基準で削ります。

  • 一文の長さ:20語以内を目安にする​
  • 接続詞は最小限(and / but / so が中心)​
  • 難しい単語は簡単な単語に置き換える
    • utilize → use
    • assistance → help など​
  • 目安時間:15〜20分。最初は完璧にしようとせず、「とりあえず通じる形」に落とすことだけを目標にします。

Step 3:声に出して「録音」する 目安時間:1回あたり5分程度

非ネイティブ技術者向けのアドバイスでは、「録音して聞き返す」ことが、発話の明瞭さと自信向上に有効とされています。​

  • スマホで30秒〜1分録音する
  • 「早口すぎないか」「キーワードが聞こえるか」を確認する
  • 必要なら、1文ごとに少し間を空けて言い直す
  • 目安時間:1回あたり5分程度。30秒〜1分の録音を2〜3本作って聞き返すだけで十分です。

これを週2〜3回続けるだけでも、「自分の70点英語」がかなり安定してきます。​

録音して聞き返すだけで、“完璧な英語を目指す自分”から“伝わる英語を設計する自分”へと意識が切り替わります。これは、多くの技術者が結果を出した最初のブレークスルーです。

まとめ:あなたの「70点英語」が武器になる

  • 世界のエンジニアリング現場では、ノンネイティブ同士が英語で協力する場面が増えている。​
  • そこで評価されるのは「ネイティブっぽさ」ではなく、「明瞭でシンプルで、一貫したメッセージ」です。​
  • 70点の英語でも、
    • 構造化された説明力
    • キーフレーズの使い回し
    • 通じる発音
      があれば、十分世界と戦えます。​

完璧さを目指すあまり、発言のチャンスを逃す必要はありません。
「自分の70点英語」を設計し、それを何度も使い回す。

それが、経験豊富な技術者がグローバルで戦うための、現実的で強い戦略です

次のステップ

① すぐに試してみましょう

この記事で紹介した『3つの場面』を、いまノートかメモアプリに書き出してみてください。

  •  自己紹介(会議の最初の1分)
  •  自分の担当範囲の説明(2〜3文)
  •  会議で一度だけ言う意見

“完璧な英語”ではなく、“70点でいい英語”として、日本語ベースで箇条書きにするだけでも十分な一歩です。

この記事を読み終えた今、3つの場面をメモするかどうかで、次の海外会議での「動きやすさ」は確実に変わります。

音声動画も活用してみてください。技術者のための発音特訓シリーズ 
発音・発声テクニックの記事をまとめています。発音・発声テクニックシリーズ

もし、書いてみたけれど英語に直すところで詰まったら、この記事をブックマークしておいてください。今後の記事で、具体的なフレーズ例や言い換えのコツを順番に紹介していきます。

② 関連記事

③ 今後の展開・予告

今後、このブログでは『70点英語で戦う50代技術者』のための具体的なフレーズ集やトレーニング方法を、連載形式で整理していきます。

“また読みたい”と感じたら、繰り返しとなりますが、ブックマークやお気に入り登録をしておいてください。

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