51歳のBさん(機械設計エンジニア)は、 初めての海外技術会議に参加しました。
アメリカの協力企業との 新製品の設計レビュー。
Bさんは、このプロジェクトの 技術リーダーです。
自分の設計について、 誰よりも深く理解しています。
質問が来たら、完璧に答えられる自信があります。 日本語なら。
会議が始まりました。
アメリカ側のエンジニアが、 図面を指しながら質問してきます。
アメリカ人エンジニアCan you explain this part?
Bさんの頭の中には、 完璧な答えが浮かんでいました。
でも、口が動きません。



Uh… this is… uh…
沈黙。
5秒。
0秒。
若手の同僚が、助け船を出しました。
「Bさんが設計したのは…」
会議後、Bさんは思いました。



20年前、TOEIC 730点取ったのに。 なぜ、一言も話せなかったんだ?
なぜTOEICスコアと実践力は乖離するのか


Bさんのような技術者は、 決して珍しくありません。
グローバルビジネスの現場で 出会った技術者の多くが、 同じジレンマを抱えていました。



「TOEICは700点以上ある。 読み書きもできる。 でも、会議では話せない」
なぜでしょうか?
理由は、明確です。
理由1:TOEICは「聞く・読む」、実践は「話す」
TOEICのスコアは、 主に2つのスキルを測定します。
- リスニング(聞く)
- リーディング(読む)
一方、技術会議で求められるのは:
- スピーキング(話す)
これは、全く別のスキルです。
野球で例えるなら、 バッティングの練習だけして、 ピッチングの試合に出るようなもの。
使う筋肉が違います。
Bさんは、20年間、 「聞く・読む」筋肉を鍛えてきました。
でも、「話す」筋肉は ほとんど使っていなかった。
だから、会議で話せなかった。
当然です。
理由2:TOEICは「時間がある」、実践は「瞬発力」
TOEICのリスニング問題は、 選択肢から選べます。
リーディング問題も、 じっくり考える時間があります。
一方、技術会議での質問は:
“Can you explain this part?”
3秒以内に答え始めないと、 沈黙が重くのしかかります。
選択肢もありません。 辞書も引けません。
頭の中で英作文している暇もない。
瞬発力が必要です。
Bさんの頭には、完璧な答えがありました。



この部分は、熱膨張係数の違いを考慮して、 0.2mmのクリアランスを設けています
でも、これを英語で、 3秒以内に言い始める。
練習していなければ、かなり難しいです。
TOEICは、瞬発力を測定しません。
理由3:TOEICは「正解がある」、実践は「伝われば正解」
TOEICには、明確な正解があります。
文法的に正しい答え。 最も適切な単語。
一方、技術会議では:



This part… uh… space… 0.2mm… for heat.
文法は曖昧です。
でも、相手が理解すれば、正解。



Ah, thermal expansion clearance!
伝われば、それで良いのです。
Bさんは、完璧主義でした。
文法的に正しい英語を話そうとして、 結果、何も話せなかった。
TOEICは、「正確さ」を測定します。
でも実践では、 「伝わるか」が全てです。
データが示す現実


私がこれまで出会った TOEIC 700点以上の技術者に、 非公式に聞いた結果があります。



英語で技術的な議論ができますか?
- できる:15%
- なんとか:30%
- 難しい:55%
合計85%が、 「話せない」または「苦手」と回答しました。
TOEICスコアは、 実践力の保証にはなりません。
これは、TOEICが悪いわけではありません。
野球のバッティング練習が、 ピッチングに役立たないのと同じ。
ただ、測定している能力が違うだけです。
TOEICで測れない3つのスキル


では、実践で必要なスキルは何でしょうか?
25年間、グローバルの最前線で見てきた真実は、 3つのスキルが決定的に重要でした。
スキル1:発音(10語から始める)
Bさんの英語が通じなかった 最大の理由は、発音でした。



This is space for heat…
Bさんの「space」は、 日本語の「スペース」でした。
3音節。
英語の「space」は、 1音節です。「spéis」(スペイs)
最後の「ス」も発音しません。
アメリカ側のエンジニアは、 何を言っているか分かりませんでした。



・・・・・?
聞き返されると、 Bさんはますます焦りました。
発音は、才能ではありません。
音声学に基づいた 科学的なトレーニングで、 誰でも改善できます。
Bさんが最初にやったこと:
自分が技術会議で最もよく使う 10語の発音を、徹底的に練習しました。
- design(デザインではなく、ディザイン)
- data(データではなく、デイタ)
- measure(メジャーではなく、メジャ)
- tolerance(トレランスではなく、タレランs)
- clearance(クリアランスではなく、クリァランs)
1日10分、3ヶ月。
たった10語です。
でも、この10語が 会議で90%の頻度で出てきます。
3ヶ月後、Bさんの発音は 聞き返されなくなりました。
スキル2:瞬発力(型フレーズ20個)
発音が改善しても、 瞬発力がなければ話せません。
Bさんが次にやったこと:
自分がよく使う説明パターンを、 英語の「型フレーズ」20個にまとめました。
例:
説明を始めるとき
- “Let me explain…”(説明させてください)
- “The main point is…”(要点は…)
理由を述べるとき
- “The reason is…”(理由は…)
- “This is because…”(これは…だからです)
数値を示すとき
- “The value is…”(値は…)
- “We set it to…”(…に設定しました)
確認するとき
- “Is this clear?”(分かりますか?)
- “Any questions?”(質問は?)
これらを、決め打ちで使い回す。
細かい部分は、単語を入れ替えるだけ。



Let me explain this clearance. The reason is thermal expansion. We set it to 0.2mm. Is this clear?
表現は簡素ですが、意図は伝わります。
そして、3秒以内に話し始められます。
型フレーズは、 技術者の論理的思考ととても相性が良いです。
「設計の型」があるように、 「英語の型」もある。
Bさんは、型フレーズを使い始めて、 会議での発言が劇的に増えました。
スキル3:グローバル英語マインド(完璧を捨てる)
最後のスキルは、 技術的なものではありません。
マインドセットです。
Bさんが最も苦労したのは、 「完璧主義」を捨てることでした。
技術者は、完璧主義です。
0.01mmの誤差も許さない。
その完璧主義が、 英語では足かせになります。
私が25年間、世界中で見てきた 「英語で成功している技術者」は、 誰も、完全な英語を話しません。
ドイツ人エンジニアは、 ドイツ訛りの英語。
インド人エンジニアは、 インド訛りの英語。
文法ミスもあります。 発音も完璧ではありません。
でも、彼らは堂々と話します。
なぜなら、 「伝われば正解」と知っているから。
Bさんが転機を迎えたのは、 ドイツ人エンジニアとの会議でした。
そのドイツ人の英語は、 Bさんより明らかに不正確でした。
でも、技術的な議論を リードしていました。
“This design… how you say… not good for stress. We need change here.”
文法はミスがあります。
でも、伝わっている。
そして、尊敬されている。
Bさんは、その時気づきました。
「流暢な英語を目指す必要はない。 伝わる英語で十分だ」
グローバル英語とは、 ネイティブ英語ではありません。
世界中の非ネイティブ同士が、 お互いに理解し合うための英語です。
教科書どおりの英語である必要はない。 伝われば、それで良い。
この考え方を受け入れた時、 Bさんの英語は変わりました。
6ヶ月後のBさん
6ヶ月後。
Bさんは、再び海外技術会議に参加しました。
同じアメリカの協力企業。 同じ会議室。
アメリカ側のエンジニアが質問してきます。



Can you explain this modification?
今回、Bさんは即座に答えました。



Let me explain. We changed the clearance. The reason is thermal expansion. New value is 0.3mm. This design is better for stress. Any questions?
ネイティブレベルの英語ではありません。
でも、十分伝わりました。
アメリカ側のエンジニアが言いました。



Good explanation. Very clear.
会議後、上司が声をかけてきました。
「Bさん、次回から 海外プロジェクトのリーダーをお願いしたい」
Bさんのキャリアが、 その日、変わりました。
TOEICスコアは、スタートライン


TOEIC 730点。
これは、悪いスコアではありません。
むしろ、立派です。
「聞く・読む」基礎力がある証拠です。
でも、それはスタートラインです。
そこから、 「話す」スキルを磨く必要があります。
- 発音(10語から)
- 瞬発力(型フレーズ20個)
- グローバル英語マインド(完璧を捨てる)
これら3つは、 TOEICでは測定されません。
でも、実践では必須です。
良いニュースがあります。
これら3つのスキルは、 年齢に関係なく、 誰でも習得できます。
Bさんは51歳でした。
「今さら…」と思っていました。
でも、6ヶ月で変わりました。
TOEICスコアは、 あなたの努力の証です。
それを無駄にしないでください。
あと一歩。
「話す」スキルを磨けば、 あなたの技術が、世界に届きます。
あなたの「話せる英語」を、今日から始めませんか?


TOEICで築いた基礎力を、実践力に変える。 その第一歩は、意外と簡単です。
ステップ1:1分で発音をセルフチェック
まずは自分の発音を確認してみましょう。 “data”と声に出して、スマホで録音。 日本語の「データ(3音節)」ではなく、英語の「DAY-ta(2音節)」になっていますか?
ステップ2:YouTubeショートで発音・発生の練習をしてみる
YouTubeショートでは、実際の現場でよく使われる語彙やフレーズを練習しやすい60秒でまとめています。
https://www.youtube.com/channel/UC5EVDD3N7JmmIQUzCFvq81g
もっと学んで見たい方は、発音・発生テクニックをまっとめていますので、そちらをご覧ください。
https://english-presentation.com/category/pronunciation/
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